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あの日、あの時、路地裏で。

第3章 路地裏イチャイチャ in ミケ



「」


近付きつつ、袋から幾つかを取り出す。


「これを頼む」

「!」
「はい!」


手渡された荷物は、纏めてしまえば袋一つ分にも満たない。

抱えるまでもなく、片手で持てる程の量だ。


(これだけ…)


本音を言えば、もっと持てるし、そうさせてほしい。

だがそれでも、ミケから託されたものだと思えば、不思議と達成感と充足感が全身を満たしていく。


「帰るぞ」

「はい」


安堵した表情で頷くに、ミケもまたほっと胸を撫でおろす。

と、先程少女から聞かされた内緒話を思いだした。


(……まさか、教えられるとはな)


ほんの少し軽くなった荷物を片腕で抱え直せば、空いた手での手を握る。


「ぇ…、あの、分隊長、これは…!」

「……」



暫しの沈黙。



「俺の荷物が減った」

故に、片手が開いた。

「その分、お前に負担が掛かる」

空いた手は、己のそれよりも小さく柔らかなそれと、繋がる。

「この人混みだ。そのまま歩かせるわけにいかないからな」

繋いだ手は、解けない。

「……ありがとう、ございます」

どうして解けないのか…それは、解きたくないから。

「…行くぞ」

「はい」



あの時と同じに顔だけ振り返ったミケは、見守る二人へと小さく頷いて見せた。


「じゃーね~!ばいばーい!」
「お気をつけて。また遊びにいらしてね」



ゆっくりと歩き出す二人を、静かに見送る二人。


並ぶ二つの影が見えなくなれば、そこにはいつもと同じ路地裏が。










「お姉ちゃん」
「何かしら?」
「ミケおじさんとおねえちゃんも、めおとまんざいするの?」
「そうね…もしかしたら…」

「いつかみられるかなー?」
「ふふ。そうなったら、きっと見られるわ」










いつか、どこかの、路地裏で。















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