第12章 【現代パロディXmas】伊達政宗編《後編》
「美依……」
息を荒らげる私に、兄貴がふわりと覆いかぶさってくる。
上半身が裸の状態の兄貴。
その兄貴の肌も、熱く火照っていて…
背中に触れるだけで、感電したみたいにビリビリと痺れた。
「肌、熱いな」
「……兄貴だって」
「お兄ちゃん、だろ?」
「……っ」
「いつからか小生意気に呼ぶようになりやがって…ずっと『お兄ちゃん』だったのに」
肩に顔を埋めながら、くすくす笑う声がする。
髪が首筋を掠めて、その刺激ですら、肌がじくりと疼いた。
『お兄ちゃん』と呼ぶのを止めたのは、精一杯の抵抗だったのかもしれない。
自分が子供な気がして。
いつでも大人の、兄貴に並びたかった。
せめて、生意気にならなくては…
口先だけでも『子供』を脱したかった。
きっと、そこからだったのかもしれない。
『お兄ちゃん』を『男』として意識しだしたのは……
「…っあ、んっ……!」
と、兄貴の唇が私の背中を這い出した。
ちゅうっと吸い付いては離れ、舌先が肌をくすぐる。
首筋から肩、肩甲骨の部分。
それから背骨に沿って…
熱い唇が、順々に私の肌に華を咲かせていく。
それは兄貴のものだと言う印。
あの夏の日は、見えない場所に一つだけ。
胸元に咲いていた、赤い華は…
『忘れんなよ』と。
兄貴が不敵に笑っている証に見えた。
「すげぇ、華が満開だ」
「んっ、やっ……」
「……嫌なら逃げろ、言っただろ?」
背中の向こうで、兄貴がそう呟く。
その甘く掠れた声は…
あのむせ返る夏を、瞬時に呼び起こす。
『兄貴、やっ……!』
『なら、逃げろ。逃げられるだろ?』
押さえ付ける手も、その優しく淡い愛撫も。
攻めるはずの兄貴は、私の逃げ道を常に作っていた。
そう、全力で押さえ込んだりしない。
いつでも振り払って逃げられるように…
どうして、どうして
兄貴はそんなに優しいのか。
そんなに欲情した目をしてるのに
何故…私を一番に考えてくれるの?
『お前を女として、誰よりも愛してる』
兄貴は───………
自分なんて、どうでもいいの?