第77章 自称・約束を守る誠実な男
「あぁぁ…兵長…へい…ちょう…」
脚を失っても、兵士でなくなっても、リヴァイの想いは変わらずに深かった。
クレアの心に少なからず存在していた不安や恐怖も、今のリヴァイの言葉ですっかりどこかへ飛んでいってしまった。
この腕の中はどんな不安も、恐怖も吹き飛ばしてしまう。
もう自分はこの腕なしでは生きていけないのだろう。
だから、今自分にできる事は1つたけ。
どんな事が起こっても後悔しないように…
リヴァイがこの先どんなケガを負っても失う事のないように…
1日でも早く医師免許を取得する事だ。
それが、兵士でなくなったクレアに唯一できる事なのだ。
「兵長…兵長……お願い…です…」
「……?!」
だが、今だけは全てを忘れて溺れたい。
明日からは兵団のために、ハンジのために、そしてリヴァイのために、自分にしかできない仕事で奉仕すると誓う。
だからどうか今だけは許して欲しい。
愛しいリヴァイの腕の中で何もかも忘れて繋がる事を、許して欲しい。
「兵長…もう…私…兵長が欲しいです。」
「…クレア?!」
「兵長のお気持ち嬉しかったです…明日からはまた兵団のために尽くし、医師になるための勉学にも励みます。なので、今夜だけは…兵長の事だけを考えていたいです…なので…して、下さい…」
「…………」
兵士を引退になったクレアは、もう壁外に出て命を落とすという危険からは遠ざかる事ができた。
しかし、だからと言って2人の時間が無限に増えた…というわけではない。
リヴァイ達調査兵はこれから先、壁の外の脅威と戦いに行く。
クレアは医師になるために膨大な量の課題と厳しい試験を合格しなくてはならない。