第5章 そんなことってない
「ねえ、ちゃんって子いる!?」
「あ…」
「あ!いた!ねえ、ちょっとお話しない?一緒にご飯食べよ!」
「え、ちょっ…」
ある日のこと。
私はいつものように友達とお弁当を食べようとしていると、仁王の彼女のミアちゃんがやってきた。
腕を引かれ、屋上に着くと開放的な空間が広がった。
「ねぇ、丸井と付き合ってるの?」
「え?ち、違うよ?」
「そうなんだ…あのさ、私…丸井のこと、好きなんだよね」
「…は?」
「だから、協力してくれない…かな?」
何言ってるんだ、この女は。
あんたは仁王の彼女でしょ?
それなのに丸井が好き?意味がわからない。
「え?だって、仁王は?」
「あー雅治?雅治のことももちろん好きだよ。だけど丸井の方が好きなんだよね。それにさ私気まぐれな人とかあんまり好きじゃないの。丸井みたいに純粋な人は一途に愛してくれるじゃない」
「何…言って」
「お願い!」
「なんで?仁王の気持ちはどうなるの?」
「それは…丸井が私のこと好きになってくれたら、フる」
「は?何言ってるの?なんで?」
「え、何?もしかして雅治のこと好きなの?」
「そんなこと今どうでもいいでしょ!?
なんで仁王と付き合ってるのにそんなこと言えるわけ!?
仁王の気持ち全然考えてない!」
「え、本当に好きなんだ。いいじゃん、じゃあ丸井と私がくっつくように協力してよ。その代わり私は雅治とちゃんがくっつくように仕向けてあげる」
「なんなの?なんであんたなんかが…マネージャー続けてるの?」
「決まってるじゃない、私が可愛いから。」
「馬鹿じゃないの!?」
「うるさいな。早く協力してよね。あんたにとっても悪い話じゃないでしょ」
なに、この女。
吐き気がする。
自分の幸せのために仁王を利用してるって言うの?
なんなの?
人の気持ちを、なんだと思ってるの…?