第5章 そんなことってない
「嫌」
「は?」
「嫌、って言ってるの。確かに私は仁王のことが好きだよ。入学してからずっとね。でも貴方みたいに可愛くて、マネージャーとしてテニスプレイヤーとしての仁王を支えられて、そんな子だから仁王は幸せになると思ったの…、」
「そんなの知らないし。貴方と私は喋ったこともないじゃない。私は貴方のことをよく知らないし、貴方も私のことよく知らないでしょ?だから私のこと変な子、自己中な奴って思ってるでしょ。でも部活の人はそう思ってないから」
「は…?」
「それにさ、この話に乗ってくれないなら私にも考えがある。丸井ってさ、ちゃんのこと、好きでしょ?
好きじゃなかったらわざわざあんなとこ行かないしね、知ってた?あそこ、カップル限定なんだよね」
「え」
「完全に好きでしょ。たまにB組通るけど、ほとんど毎回丸井と話してるし。別に丸井と話すなって言わないけど、協力してくれないんだったら…仁王と丸井と話せなくなるように仕向けても…いいよ」
「…」
「どうする?」
「…クソ女」
「クソでもなんでもいいよ、とにかく協力して?その代わり、仁王でも幸村くんでも誰とでもくっつけるように私が協力してあげるから。」
「…それ、私に拒否権あるわけ?」
「ないけど?」
「…あ、そ」
「交渉成立でいいよね?」
「…うん」
こんなクソみたいな考えでも、交渉に乗っちゃう私はおかしいのかな。