第9章 カカシ先生ハロウィン
「trick or treat!?カカシ先生!」
アパートのドアを開ければ、黒い帽子にミニスカートの魔女がいた。ちゃんと手にはほうきと木カゴを持っている。やる気満々だ。だからあんなにノックが激しかったんだな。
「ん?先生もちゃんと仮装パーティーの格好してるじゃないですか!珍しい。ドラキュラですね!」
柔らかく笑みを浮かべる花奏に、おれはつい、釣られて笑っていた。
真っ黒な服に赤いマントをつけただけの簡単な変装。おれはね、今日は違う意味を込めて、この格好をしてるんだよ。気づいてないと思うけどね。なんて思いながら、花奏の腕を掴んだ。
「ん?カカシ先生?どうしたんですか?」
「お前年齢はいくつになったんだっけ?」
「え?18歳ですよ?ほら、ハロウィンが誕生日だっ……と」
言ったじゃないですか。は、おれの腕の中で聞いた。ドアをもう片方の手で閉めて誰も入ってこれないように鍵を閉めた。これでお前は、簡単には逃げれないね。鍵を開ける1秒がいるんだからな。
「カカシ先生……?」
「何年待ったと思ってる?何年、おれが花奏を待っていたか知ってるか?」
可愛い魔女を抱きしめて、体温を感じていた。やっと自分の想いを伝えれる。やっと素直に好きだって言える。愛していると言ってやれる。
「花奏、trick or treat。お菓子くれない?」
「ーーーえ?ーーあの、私は持ってないですよ?だってもらう方ですし……」
ちょっと慌てた花奏は、真っ赤な顔をしていた。
「へぇ……じゃあ、可愛い魔女さん、仕方ないな。寝室でいっぱい悪戯させてくれ」
「ーーカカシ先生…っ!?」
ひょいと荷物を持つように花奏を抱き抱え、ベッドの方角へと向かったオレの足取りは、スキップするように軽かった。
fin