第8章 イタチ。切
花奏がもう一度目を開げれば、病院のベッドの上であった。
木ノ葉病院の馴染みある天井が目に入る。
「目、覚ましたか?」
窓側に目を向ければ、カカシが腕組みをして、丸椅子に座っていた。
「カカシ……、ごめん…迎えに来てくれたんだね……」
少し笑みを出す。
「……イタチを追いかけるな、と言ったはずだが?……ったく、よく命があったな。普通は殺されてるでしょ」
呆れるカカシは、ため息を吐く。
「連れて行って、て言ったのに……」
「………っとに、バカでしょ。お前は!何考えてんの?」
頭を撫でるカカシを見上げて、花奏は、泣きそうな顔に変わる。
「……ごめん、カカシ……もう、しないから……」
カカシの瞳が赤く充血し、揺らいでいた。
「当たり前だ。……オレが、どれほど、お前を心配したか、分かって…ないでしょ……」
暖かく頭を撫でる指が、微かに震えている。
「花奏、もうイタチは忘れろ……。オレがいるだろ?それでいいでしょ。もう、アイツを追いかけるな」
「……カカシ……」
ま、今はゆっくり休んで寝ていろ。
当分、お前を見張るからね、また勝手に行ったら困るから。
そう言って、カカシは花奏の手を優しく包んだ。
「………カカシ……ありがとう…」
花奏は、
困った顔をして、小さく笑った。
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その夜、窓から
まん丸な大きな満月を見つめる。
あの日と同じ、綺麗な月。
愛しいイタチを、
忘れる事が出来ず、涙を流していた。
イタチ君……
どうか…死に急がないで。
どうか…死なないで……。
どうか。どうか。
イタチ君、死なないで。
私の心は、いつもイタチ君の
そばに、ずっといるから……。
どうか……
ずっと、花奏は、
窓から見える、
明るく美しい満月を眺めていた。
fin