第21章 暗部カカシ
「雨、上がらないね」
降りしきる雨。
森林が続くツーマンセルの帰り道。
いつもの暗部任務が終了した帰り道。
大木の幹の下で、隣にいる暗部ろ班隊長である、はたけカカシに、私は何気なく話をかけた。
2人並び草むらの上で座りながら雨宿りをしているが、雨足が遠のく気配は感じない。それどころか益々勢いは増していく。
ぽちゃん…ぽちゃん…
葉や枝、幹から響く雨音をBGMのように聞きながら、返事を待っている。しかしカカシは声を出さない。ぴくり片眉をあげた。
聞いてる?と、ちらりと横目で見たが、
カカシは前を向いたまま。というか頭に付けた狐のお面しか見えないから、顔は見えない。
私は可愛いとは程遠い、兎のお面を付けている。
カカシとは、昔からの長い付き合いで、俗に言う幼馴染。暗部では、ほぼ同じ日に入隊したせいか、私たちは、よく任務を共にする事が多かった。
だけど、仕事で言い争う事が多く、意見をズバズバ言えば、応酬が凄まじい。
周りからは、犬猿の仲だなんて言われたりしている。
私とカカシは前々から、
水と油の関係らしい。
「…………?」
無視……。はあ。相変わらず嫌な野郎だ。私にあまり気を使った態度をカカシは取らない。
ろ班の部下に対して、あんなに懸命に、不器用ながらに話しかけて、体調や仕事の面で思いやる姿を見せているのに、私に対しては、一切そんな優しい態度を示さない。
"花奏は、何でも出来るから大丈夫でしょ"
って前に言われたけど、幾ら何でも他の人と態度が違い過ぎでしょう。
そりゃ何年もやってたら、言われなくても分かっているけどさ、たまには優しい労いの言葉をかけてくれても減りはしないのに。
と前を向きながら、苛々していた。
流石にこんな冷たい態度に、痺れを切らした私はカカシの方に顔を向かせながら声を荒げた。