第17章 第13章の続き サソリさん
「サソリさん」
「なんだ?」
「風が冷たくて寒いんですけどーー! サソリさんのバカーー」
「オレのせいじゃないだろ」
居酒屋を出た。サソリさん始動の下、
強制退去が執行されてしまった。
くそぅ……
あと1杯だけ生ビール飲みたかったなあ。
戸口を開けた。雨ではなく、みぞれが降っていた。外に出ると頭や肩に当たる。 地味に痛い。
はあーっと、私の口から出た息は、
白くなって消えてゆく。
……しまった。
こんなに寒いのに、マフラーも手袋もない。 カイロも持っていない。お酒を飲んだのに、あったまった身体が冷えてしまう。
「……うう……本当に寒い……」
身体がぶるっと震え、凍えてしまう。
ちらり、寒さなんて無関係な
サソリさんを見た。
普通に歩いてる。あーーやだやだ。
「ねえ、サソリさん。 腕組みしちゃってもいいですか? もう、足がふらふらでぇ、歩けなくってぇ。あとあと、寒くてぇー死んじゃう……あー……!」
足がをほつれさせて、サソリさんの二の腕を、
ぎゅうっと掴んだ。
「ね? もう千鳥足なんです」
よし。自然に、"酔ってますアピール"が出来たはずだ。
我ながらバッチリ。
サソリさんが歩きながら
わたしを黙って見つめる。
「お前……、さっきまで、平気でスタスタ歩いてなかったか?」
おっと、おっとっと。
速攻バレて
吹き出しそうになった。
「え、ええーー? いいじゃないですか。
す、こ、し、く、ら、い」
ヘラヘラ笑い、酔っ払い演技をしているが、
内心はハラハラだ。心臓に悪いし口が渇く。
「……花奏……」
サソリさんの表情は険しい。
半眼だ。眉間にしわを寄せていく。
「……調子にノリやがって」
って言いそう。顔が物語ってる。
ひぃ。
でもでもでも!私はぎゅうってしたいの。
ここで怯んだらダメだ。
「まあまあ、ね? そう堅いこと言わずに。 ね? たまにはいいでしょう? ね?」
ね? を連発しまくり、私は冷や汗を流して笑った。サソリさんの腕を持つ力に、私は力みが入る。
この腕を払われたら、今日は立ち直れない。
泣いて家に帰ってやる。
「……」
深い沈黙が降りていた。