第7章 逃走
「悠子さん。ちょっと頼みがあるんだけど。」
「ん?なぁに?」
洗い物をしていた私を彼が呼び止めた。
彼に魔法薬を作る部屋へと案内される。その部屋は何度か入ったことがあるが、この小屋で1番大きな部屋だった。棚には所狭しと瓶が並んでいる。
「新しい魔法薬の試作品を作ったんだ。飲んでみてくれないかなぁ。」
「人間の私でも大丈夫なの?」
「うん。むしろ人間用の魔法薬だからあなたしか試せないんだ。」
「どんな効果なの?」
「元気がみなぎってくる薬!」
「な、なんか抽象的ね。」
魔法薬だしそんなものなのだろうか。
悠子は渡された小さなコップの薬を飲み干し、机の上においた。
「どう?」
「そんなに早く効果が現れるものなの?」
「うん。魔法薬だからね。」
そう言ってるうちに私は体の中が熱くなってくるのがわかった。
「なんか…体が熱い…」
「元気がみなぎってくる感じ、する?」
「元気…というか…」
私は床に座り込んでしまった。
「悠子さん!?」
彼が思わず、私の肩を掴んだ。その掴まれている部分がなんだかとても…。
「ケルス…はぁ…触らないで…」
私は彼の手を優しくのけた。なんだか、息が荒くなってきた。急に服の肌に触れる衣擦れが妙に気になる…気になるというか…。
「悠子さん、顔真っ赤。ごめん。失敗したみたいだね。どんな症状になってるか調べないと。」
そう言って彼は、私をお姫様だっこしてベッドへと運ぶ。