第7章 逃走
「すいません。突然無理言って。」
「いいんです!彼女はいつもこんな感じなんで…。」
彼はハハと困ったような顔で笑った。そしてすぐにハッとした顔になる。
「あっそうだ。逃げてきたってことは、ここで暮らすんですよね。」
「え、ええ。」
「大丈夫ですよ!小屋は古くて狭いですが、きちんと衣食住保証します!」
彼は自信たっぷりな様子で胸をはる。
「で、できれば働かせて欲しいんだけど…」
私がそう言うと彼は目をぱちくりさせた。
「バックス様の所で働くのが嫌で逃げてきたんじゃないんですか?」
「働くって…あんな生活は働くなんて言わないわ。」
「淫魔の夜伽は立派な職業なのに…。」
魔界の常識にカルチャーショックを受けつつも、私は咳払いをする。
「とにかく、私はあんな生活じゃなくて、そう。例えば…部屋の掃除とか、洗濯とか、そういう家事みたいなものを手伝わせてもらえればありがたいんだけど。」
「え?それは助かります!是非お願いします!」
少年はキラキラとした顔つきで両手を握っていた。
ということで、話はまとまり、私はこの小屋の家政婦として働くことになった。
その日の夜、私のベッドがないことに気づき、適当なソファーもなく、彼と一緒に寝ることになってしまった。