第6章 約束
「ほんとなの?」
「バックスとっていうか…そんな好きでもない人とするの普通は誰でも嫌でしょ。」
「なるほどね。バックス様の良さが理解できないのは意味わかんないけど、悠子がそういう気持ちなら、あたし、手伝ってあげてもいいわよ!」
「手伝うって何を?」
「ここから逃げ出すの!」
「逃げ出すって言っても…。」
人間界に帰る希望は薄く、外に出れば命はない世界だ。
「要はバックス様の夜伽になりたくないんでしょ?なら他の魔族の世話になればいいのよ。」
「他の魔族…?」
「ええ。魔界にはバックス様以外にも人間の配下を持つ魔族は大勢いるわ。まぁ…その扱いは様々だけどもね…。」
チュンランの目が少し伏せった。
「でもね。あたし、いい人知ってるから、その人を紹介してあげるわ。」
すぐに笑顔になったチュンランは私の手をギュッと握った。
まさに願ってもない提案だが…。