第3章 『お世話』
「ちょっと!!」
奴の部屋の扉を開けると同時に叫ぶ。
「なに!?」
どうやら奴は寝ていたらしくベッドから飛び起きた。
「申し訳ありません!バックス様!」
そして私の後ろから世話係が現れた。
だけどそんなことには構っていられない。
「今すぐ元の世界に戻して!」
ぽかんとした顔のバックスに詰め寄る。彼は2、3回瞬きした後、大きなため息をついた。
「無理。」
「どうして!」
「魔界と人間界を繋ぐのはそう簡単なことじゃない。魔王の許可がいるんだよ。」
「じゃぁ許可とってよ!」
「人間の願いなんて聞き入れられる訳ないでしょ。」
「なによそれ!」
「嫌ならこの城から出ていけばいいんじゃない?女の子はまだ何人かいるし。」
彼はニヤつきながらそう言った。本当に腹立たしい。私が死にたくないことを知っていてそんな事を言っているのだろう。
私は彼の顔めがけてビンタしようとしたが、それは叶わず、また腕をひねりあげられてしまう。
「痛いっ」
「あんまり暴れ回るならほんとにここから追い出すよ?」
骨がミシリと悲鳴をあげるように痛む。
「なによ…」
私はいつの間にかボロボロと泣きだしていた。
自分の貞操は守れず、死ぬ勇気も出せず、情けなさで胸がいっばいになる。