第30章 後始末とこれから
左手を優しく握られたまま、頭を撫でられ。額の上の辺りにキスをされて。
視線を上げれば、秀一さんは稀に見るくらいの優しい顔、ほんのり笑った顔をしてて。見てるだけでこっちも笑ってしまいそう。
たっぷりと時間をかけて唇を重ねている間、なんだろう、触れた所から温かい気持ちが流れ込んでくるようで・・・無性に幸せだと感じた。
「もう晩メシはできてるのか」
「はい。今日は結構頑張ったんですよー!」
かおりはニコニコと愛らしい笑顔を浮かべながら夕食の準備に取り掛かる。それを俺は心持ち穏やかにキッチンの端から眺める。
この一年余り、俺も彼女も様々な“秘密”を守りながら生活してきた、それからようやく解き放たれた・・・今はこの時間を大切に過ごしたいと思う。
しかし、俺には一つだけかおりに話していない“秘密”がある。降谷零と彼女の関係についてだ。
バーボンこと安室透の正体が公安の警察官だと確定した所で、かおりにはもうそれ以上彼と親しく関わる必要は無くなったんだが。彼らはそれ以後もずっと親しい関係にあったと俺は思っている。(所謂男女の関係だ)
かおりが俺の事を愛してくれているのは明々白々、その気持ちは身を持って感じているし、何より彼女が俺の傍から離れる訳が無い、という自信はあったが。
だからと言ってかおりが他の男と仲良くしているのは、勿論気分の良いものでは無い。
例えばかおりを問いつめれば、おそらく彼女は困った顔をし、泣き出し、結果降谷くんとの関係を断っただろう。
しかし俺は、彼女自身の意思で彼との関係を清算してほしいのだ。
かおりなら、然るべき時が来たらきっとそうする筈だと信じている。
そうだろう?かおり・・・
END
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