第24章 交わらない男達の二日間
翌日。
キャンプ場からの帰りの運転は昴さんだ。なのでわたしが助手席かな、と思いきやそこはママに取られてしまい。
それなら一番後ろだな、と乗り込むと、隣に座ってくるのは安室さんだ。
これもママなりの“かおりちゃんと安室くんの時間を作ってる”って事になるんだろうか・・・
しかし朝食をお腹いっぱい食べた後なのと、例によって車の振動は心地良い、出発して十数分、高速道路になんて乗ってしまえば尚のこと・・・睡魔に襲われる。
顔をしかめて進行方向を睨んでいると、「無理しなくていいですよ」と隣の彼に優しく言われ頭を撫でられるともうダメだ。
休憩しに立ち寄る地点に着くまで、グッスリ眠ってしまったようで。
ふと目が覚めると高速のサービスエリアに停められた車の中に安室さんと二人だった。
「ふぁ・・・普通に寝ちゃったーはずかし・・・」
「・・・子どもみたいだよな、車乗ってすぐ寝るとか」
「悪かったね、子どもっぽくって」
「可愛いって言ってるつもりなんだけどな。ほんと・・・キスしたくなるくらい」
「・・・っぁ」
髪を撫でられて、彼の顔が近付いてきた。もしかして・・・と考える間もなく唇が重なり、ゆっくりと離れる。
ジワジワと頬が熱くなるのを抑えられない。
「零・・・ずるい・・・昨日だって、急に・・・」
「昨日?昼間の事か?あれはかおりさんがあんまり可愛いからつい」
「ついって・・・わたし大変なんだからね!結構。みんなの前で何も無かったような顔するの・・・」
「そうなのか?キスしたこっちとしては寂しくなる程の名演技だったな」
「もー・・・」
そのうち車に昴さん達も戻ってきて、わたしは勿論何も無かったかのように振る舞い、車は米花町方面へと走り出す。
沖矢昴の運転する車が喫茶エラリーの前に着き、六人はそれぞれに別れ、長かったような短かったような一泊二日の旅はここでお終いだ。
エラリーと、その上の探偵事務所を見上げたかおりは一気に現実に引き戻された気分になる。
明日からはまたいつも通りの日常だ。
何故かいつも事件に巻き込まれる人間達に囲まれたかおりの日常は、特異なものではあるけれども。