第23章 暗躍する工藤夫妻
お風呂の準備をし、二人でお湯に浸かる。
工藤邸のバスタブよりも一回り以上小さいけど、二人で入れる大きさではある。
いつも通り背中に秀一さんを感じながら、自分のふくらはぎを手でさする。
「んーっ・・・今日はいっぱい歩きましたねー」
「そうだな。疲れたか?」
「身体は疲れてるんだと思いますよ、でも楽しかったからあんまり感じてないかも」
「まあ今日はしっかり休め。お前は体力が無いんだから」
「いいですよねー・・・秀一さんは。超タフで・・・」
「こんなことで疲れていたらFBIは務まらん」
「わたしには絶対できない仕事ですね・・・」
「かおりにはまず無理だ」
「えー?女スパイならできるかもよ?一応探偵としての腕は中々らしいんですけどね」
「探偵と捜査官は違う・・・お前分かっているのか?命の危険がすぐ近くにあるんだ」
「・・・はい」
秀一さんの言っている事は当然の事だ。
本気でスパイになりたいなんて思ってはないけど、自然と肩が落ちて、膝を抱えて丸くなる。
後ろから秀一さんの腕が回ってきてすっぽりと腕の中に収められた。
「かおりは、安全な場所でのんびり過ごしていればいい」
「うーん・・・わたしだって、何か役に立ちたいです・・・」
有希子さんにも「あの二人に任せておけば大丈夫」とか言われたばかりなのに、そんな台詞が口をついて出てきた。
あごを半分水面に浸けて、更に身体を丸くする。
「役に立っているぞ?少なくとも俺にとってはな」
「そうですか?・・・へへっ」
そう言われると嬉しくて、つい顔が綻ぶ。
頭を撫でられて、髪にキスをされ、気分はすっかりいい心地だ。