第18章 秘密が多い私達
「急にどうしたんだよ」
「なんとなく。今みたいにこうやって過ごす時間が、いつかなくなっちゃうのは嫌だなーと思って」
「組織絡みのことが終われば・・・たしかにここにいる必要はなくなる。僕はポアロを離れるだろうね」
「さみしいね・・・」
「本当か?」
「ほんとだよ・・・嘘っぽい?」
「だってかおりさんは僕がいなくたって・・・」
「でも零と離れたくないって思う」
「どうしちゃったんだよ・・・そもそも米花町から消えるのは安室透で」
「あ、じゃあ零とはずっと会えるってこと?」
「かおりさんが会いたいと思ってくれるならね」
「うん、よかった」
「そんな可愛いこと言って・・・」
零の手がこちらに伸びてきて、髪を撫でてくる。
あと三秒目が合ったままだったら、キスしてくるだろう。
ちなみに、わたしは零からラムの情報を聞き出したいが為に、さっきからこんな可愛いことを言っている訳で。
とにかく零のガードをゆるゆるにさせたいんだけど。
ここでタイミングが良くも悪くもわたしのスマホが音を立てる。
零から離れてスマホを見ると、エラリーのママから電話だ。
「もしもし・・・?」
「あ、かおりちゃん?今かおりちゃんにお客さんが来てるのよー。安室くんもそろそろ休憩は終わりでしょ?一緒に降りてこれるかしら?」
「はい、わたしに?誰でしょう?」
「男の人よ。メガネのサラリーマンかしら。じゃあ、待たせておくからねぇ」
電話が切れる。わたしにそんな知り合いは、いたっけ・・・?
「どうした?」
「エラリーにわたしのお客さんが来てるから降りてこいってママが。メガネのサラリーマンだって・・・」
「ふーん・・・昴さんか?」
「昴さんなら事務所に来るでしょ・・・サラリーマンぽくもないし」
「誰だ?」
「さあ・・・」
「まあそれより。二人だけの内に話したいことがまだある。今度長野に行くんだろ?仕事で。僕もついて行く」
「なんで知って、るの」
「その依頼のメールを出したの、僕だから」
「っえ!?」
「これなら昴さんに気兼ねなく遠出できるよな」
「そういうこと・・・先に言ってくれればいいのに」
「敵を欺くにはまず味方からだ。それに、こうでもしないと、かおりさんと出掛けるのはまだまだ先になりそうだったからね」