第15章 雪の中の
家に帰るため、玄関へ向かおうとすると零に抱きしめられた。
その腕からは、なかなか離してもらえなくて。
「零・・・もう帰るから」
「・・・やっぱり僕も一緒に送っていく」
「一人で帰れるよ」
「いや、送るよ」
結局二人でタクシーに乗り、工藤邸へ向かう。
車内ではまた手を繋がれたまま。
家が近付いてきた頃、強く手を握られて頬にキスをされて。
工藤邸に着き、料金を払おうとすると断られ。
握られた手を持ち上げられ手の甲にキスをされて、ようやく手が離れた。
おやすみの挨拶を交わしてタクシーを降りた。
零は馬鹿じゃないのか。
彼はまた今からさっきまでいた自宅に戻るのだ。
家に入り、一人で盗聴器の確認をしていると昴さんの格好をした秀一さんが出てくる。
「ただいまー」
「おかえりなさい。楽しかったですか?」
「はい。ちょっとはしゃぎ過ぎて疲れました!お風呂入りたいな」
「ええ。準備はしてありますから、先にどうぞ」
「ありがとうございます」
胸がズキズキ痛む。
湯船に入る前に、熱いシャワーを身体中に浴びた。
零の痕跡を全て洗い流すように。