第13章 諜報戦の行方
片手を前に回されて抱きかかえられながら、少しずつワインを口へ運んでいく。
正直飲みにくい体勢ではある。
でもこのままでいい。これがいい。
「かおり?」
「なにー?」
秀一さんが首元に顔を埋めてくる。
「やっぱり、これが落ち着くな」
「わたしもです・・・」
「・・・もう離したくない」
「どしたの秀一さん・・・珍しい」
「たった二日足らずのことだったが・・・」
「・・・なになに?寂しかった?」
「俺が寂しいなんて口にすると思うか?」
「ちょっと言ってほしかったけど」
「全く寂しくなかったと言えば、嘘になるが」
「ああ、そうですよね」
秀一さんらしい答えだけど。
バーボンの入ったグラスを置いて両腕で抱きかかえられて、後ろの秀一さんに深く身を預ける形になる。
「俺は寂しいというよりも・・・愛した女ひとりも今の俺では守れないことが悔しかった」
“公安のセーフハウスに行け”と言ったのは秀一さんなのに・・・
そんな風に思ってたのか。
さっきとは違う胸の痛みに襲われる。
きゅうっと締め付けられているみたいな。
「それは・・・秀一さんが表に出られないのは、ひいては大勢の人を守る為じゃないですか。分かってます。
秀一さんってすっごい捜査官なんでしょ?キャメルさんも言ってた」
「かおりはできた女だな・・・」
「赤井秀一の恋人ですからね」
「そうか・・・では今夜はどうやって愉しませてもらおうか。俺の恋人さん?」
頭を掴まれて秀一さんの方を向かされる。
目が合って・・・暫く逸らせなくて。
急速に心臓がうるさく音を立て始めた。
ワイングラスの中身を飲み干してテーブルに置き、彼の方に頭の向きを直すと、また視線が絡む。
「秀一さん・・・」
「かおり・・・」
いつも、こうやって名前を呼ばれるだけで力が抜けそうになる。
秀一さんの声が、身体の奥を痺れさせるように甘く響いてきて。
首元からぐいっと引き寄せられて、唇が重なる。
舌が割って入ってくると、甘いウイスキーの香りがして。
酔ってもないのに頭がクラクラしそうだ。
腕がパジャマの裾から差し込まれて素肌を這い上がり、乳房を持ち上げるように揉まれる。
キスの合間に勝手に声が漏れ出し、どんどん息も上がってきて。
カラダの奥が疼く。