第13章 諜報戦の行方
翌日、零はポアロへ出勤する。
まるで恋人かのように彼を送り出して、また家に一人になった。
ベルモットという女は本当に動いているんだろうか。
一度考え出すと、気付けば心拍数は上がっていて。
一人になることでこんなに不安になるなんて、思ってなかった。
何も考えなくていいように、とりあえず洗濯機を回して、部屋の掃除をした。
何かしていないと不安で仕方なくて。
昼食の準備をしていて、ふと思った。
隣室にいるであろう、風見さんに電話をかける。
「はい風見です。どうかされました?」
「あの・・・お昼一緒に食べません?」
「それはできかねます。降谷さんの許可がないと」
「そんなのいらないでしょ」
「今日はいつベルモットが仕掛けてくるか分かりませんから、降谷さんにも連絡はできませんし」
「一人でいると不安なんです・・・ダメですか?」
「いけません」
押し問答がしばらく続いたが、結果根負けした風見さんが部屋に来てくれて。
パソコンに映し出されたカメラの映像を見ながら、二人で昼食を食べる。
「零ほど上手じゃないけど・・・」
「いえ、十分美味しいです」
「それはどうも・・・でも零は何やってもデキる男ですからねー」
「自分もそう思います」
「今回のことも上手くやり込めてきてくれるんですよね」
「そうでしょう。でも降谷さんは私情が絡むと暴走しかねないので・・・あなたのこともそうです。ですから今回は少し心配でもあります」
「わたしと零は、大した関係ではないです」
「大したご関係ですよ。現在、降谷さんのこの自宅の場所を知っている人間は、ご本人と、自分と、葵さんだけです」
「え!そうなの?」
「ですから絶対に他言はしないように」
「言えませんよ・・・零もそれを分かっててここにわたしを居させてるんです・・・昨日風見さんはわたしが零を弄んでるとか言いましたけど。振り回されてるのはわたしの方ですよ」
「そうでしたか・・・自分も・・・降谷さんには振り回されっ放しですね・・・」
「それでもついていっちゃうんでしょ?」
「はい」
「恐ろしい男ですねー。降谷零って男は」
「全くです。あなたもですが」
「わたし?」
「あの降谷さんに加えて、FBIまでもを動かす女性ですからね」