第10章 彼らの秘密
秀一さんがFBIの仲間に自身の生存を明らかにして以来、彼は外出することが増えた。
当然と言えば当然だけど、家に帰っても秀一さんが居ないのは寂しかったりする。
今日は休日。エラリーも開けない日。
せっかく二人でゆっくり過ごせるかと思ってたのに、秀一さんはコナンくんとお隣の阿笠博士と三人で出掛けてしまった。
なんでも、博士が殺人事件の参考人として捜査一課の警部に呼ばれたんだとか。
どうして秀一さん達がそれに付き添うのかは、「詳しい事は帰ったら話す」と言われ、聞かされず終いで。
・・・怖い顔してたから、おそらくあの組織絡みなんだろうけど。
急に一人の時間ができると、やりたい事って思いつかないものだ。
ポアロにでも行ってみようか・・・
秀一さんがいないから、零、という訳じゃないけど。
エラリーのバイトとしての挨拶も兼ねて、一度は顔を出さねばと思っていたのは確かだから。
スマホでポアロの位置を確認すると、家からバッチリ徒歩圏内。むしろ岡田探偵事務所やエラリーのビルより近そう。
メッセージアプリを起動して、安室透を探す。
“こんにちは。今日はポアロにいますか?”
すぐに、返信があった。
“こんにちは。今日は閉店までいる予定です。もしかして、僕に会いに来てくれるんですか?”
・・・わたしが会いたいのは、どちらかというと零じゃなくて、マスターや他のバイトさんなんだが。
“ポアロの皆さんにも挨拶したいし、後で伺いますね”
“お待ちしてます”
零もコンスタントに返信してくるし、ランチタイムのバタバタも落ち着いた頃なんだろう。
家を出て、ポアロへ向かう。
十分もかからずに目的の場所は目で確認できた。
しかも、そのビルの二階には“毛利探偵事務所”の文字が見え、驚いた。コナンくんの居候先じゃないか。
ポアロの前に着き、ドアを開ける。
「いらっしゃいませ!一名様ですか?」
笑顔の可愛い女性店員に出迎えられ。
「梓さん、その方がかおりさんです!」
奥から零の声が聞こえて。
「あ!すみません!お待ちしてました!カウンターにどうぞ!」
中へ案内される。
カウンターの中には零がいて。わたしはその彼の目の前の席に座った。