第10章 彼らの秘密
仕事を終え、もちろん今日はポアロになんて行かず、家へ真っ直ぐ帰る。
今夜の夕食のメインは、秀一さん手作りのタンシチューだ。
どんどんスキルアップしていく彼の料理の腕前に、女としての自信をなくしてしまいそう・・・
(零の料理の腕がプロ級なのとは別問題。チラッと頭を過ぎったけどすぐに消去した)
「秀一さん・・・ほんとに料理上手くなりましたね!美味しー」
「お前がちょこちょこ教えてくれるからだろ」
「いや、でもこんなのわたし教えたことないし」
「最近は何でも簡単に検索できるからな」
タブレットを指差す。なるほど。
「上手くできれば、かおりの美味そうに食べる顔が見れるし。やり甲斐あるぞ」
「へえー・・・嬉しい」
本当に嬉しくて、顔がふにゃっとなりそうなのを必死で抑えた。
こんなほのぼのした時間が幸せだと思う。
やっぱり零とは違う。わたしは秀一さんが大好きなんだと、改めて自覚する。
夕食もお風呂も終えて、今日は秀一さんの部屋で晩酌だ。
「昨日はFBIで何があったんですか?」
「・・・ラムって奴が動き出したって話は前にしたな?」
「はい。ボスの腹心だとか言う」
「結局は何もなかったんだが・・・ラムかもしれない人物の情報が入ってきたから、そいつに張り付いていたんだ」
引き続き、ラムの特徴である、片目が義眼もしくは隻眼の人物が周りに現れたら、注意するようにと言われた。
「降谷くんは何か言ってなかったか?」
「さあ・・・ラムの話自体してないですし。ただ彼がFBI側に有利な情報をくれるとは思えません」
「・・・半分はFBIがアメリカの機関であるせいだが・・・半分は俺のせいだな」
「そのことなんだけど・・・」
聞きたくても聞けなかった事・・・
聞くなら今かもしれない・・・思い切って聞いてみる。
「彼から秀一さんの話を聞きました。その・・・二人の間に確執がある原因についてです」
「彼の同僚を、俺が殺したって話か?」
「はい・・・本当、なの?」
「結論から言うと、俺が殺した訳では無い。ただ・・・もっと上手く立ち回ることができていたら、彼を救うことはできた筈だ。今でも悔やんでいる」
「何があったか、聞いてもいいですか?」