第1章 first summer
「え。ちょ、え?」
「ふぇっ…っ…ひっく…」
こうなったらもう止まらない。大号泣の。
テンパるシリウスに対して、リリーとアリアが「あーあ」とつぶやく。
「泣かせたー」
「泣かせたー」
「わー、シリウスが泣かせたー」
ちなみに最後に便乗したのはジェームズである。
「ま、マジか。ちょっと待てよ、なんで泣くんだよ?俺が悪いのか?ごごごめんって、まだ痛いのか??」
おろおろと動揺しての頭に手を伸ばすシリウス。
「…っ…~~ぃ…らっ…!」
「え、なんて?」
小さすぎる声は一度ではシリウスの耳に届かない。
ぐぅっとお腹に力を入れてから、はやっとの思いで声を出した。
かなり無理やりだったが。
「ぼぼぼぼ僕は!なんでも、な!っいので!!気にしないでくだしゃいっっ!!!」
「……くだしゃい?」
「/////」
耳まで真っ赤にしたはくるっとイキオイよく回れ右をして、ダーッと全力でダッシュした。
「…逃げたわね」
「完全に逃げたね。しかも最後噛んだね。ナイスドジっ子」
「あの野郎…!人がせっかく謝りにきたのに逃げるってどういうことだぁ?」
イラッと眉間に皺を寄せたシリウス。
選択肢は勿論、【追いかける】だった。
「大丈夫ー?、結構足早いよ」
「オトコなめんな!!」
いうが早いや、が走って行ったほうへ向かうシリウス。
大広間は悲鳴に包まれた。
キャーシリウスサマ-!?
イヤアァァー!!
「…ねぇアリア」
「何リリー?」
「あなたってシリウスと仲良かったのね」
「まぁ、所謂ご近所さんってやつー?」
檸檬を一切れ。
紅茶に放り込んでアリアはなんでもないように返事をした。