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「大空ゆ(おほそらゆ)」神威

第1章 七夕の夜


「どうしたの?俺に逢えて嬉しくないの?」
心の底から不思議そうに聞く神威に、私はぎこちない笑みしか出来ない。
「だって…急に来るから、びっくりしちゃって」
本当に急なんだもん。
私の彼氏…神威は天人だ。しかも宇宙海賊。
いわゆる一般常識的なもので考えていけない事は分かっているが、どうにもついていくのが難しい。
前に逢ったのいつよ…。もう4ヶ月くらいたたない?しかもその間ほとんど連絡ないし、それが七夕の夜、アンニュイに空を見てたらいきなり3階の窓から入って来られて、驚かない人間がいたら見てみたい。
「ねー何ぼぉーっとしてるの?せっかく俺来たんだからさぁ…。来るのけっこう無理したんだよ」
私の思考をよそに、神威は声をあげながら私の帯をとき始める。
「ちょ、ちょっと待って」
「なんで?待つわけないじゃん」
こいつ…。
本当に、無邪気な顔をしてこういう事するから腹がたつ。しかし、同時になんだか許してしまう。
思わず笑うと、神威は真っ青な眼を細めて、満面の笑みを浮かべる。
「あ、やっと笑ったぁ」
まったく、こういうところがあるから、私はこの変わり者と付き合い続けるのだろう。
神威に抱きしめられながら、窓から夜空を見上げる。
ねぇ織姫様、貴女もけっこう苦労してそうだけど、それでも離れられないのって、惚れた弱みってやつなのかしらね。
星がキラリと、光った気がした。

解説

「大空ゆ通ふ我れすら汝がゆえに天の川道をなづみてぞ来し」
『大空を自由に駆け巡る私だが、七夕の定めに従って、1年に1度の今日、あなたの為に天の川の道を苦労してやって来たよ/柿本人麻呂』
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