第6章 姫巫女と入学式
愉快な歌はまだまだ続き、丁寧な寮の紹介へと移った。
勇気ある者が住まう、勇猛果敢な騎士道を持つ『グリフィンドール』。
正しく忠実で忍耐強く、苦労を厭わない『ハッフルパフ』。
古き賢き、知識欲の強い『レイブンクロー』。
どんな手段を使っても目的を成し遂げる、狡猾な『スリザリン』。
――かぶってごらん! 恐れずに!
そう歌う帽子だが、正直恐れしか感じない。
いわゆる、魔法道具というものなのだろうか。
『独りでに動く物』に免疫がないわけではないが、普段とは違う場所や状況のせいか、シオンの目にはやけに異様に映った。
組分け帽子の歌が終わると、大広間にいた全員が拍手を送る。
帽子はそれぞれ四つのテーブルに礼をすると、再び沈黙した。
「僕たちはただ帽子を被ればいいんだ! フレッドの奴、やっつけてやる。トロールと取っ組み合いさせられるなんて言って」
ロンがシオンとハリーに聞こえるよう囁く。
トロールと取っ組み合いをさせられると聞いていたのか。
やっつけてやる、とロンは意気込むが、上手く躱されて終わりになる結末しか見えない。
シオンとハリーはただ苦笑するしかなかった。
まぁ、トロールと戦ったり、よく分からない試験を受けたりするよりは、帽子を被る方がずっといい。
やがて、マクゴナガルが長い羊皮紙の巻紙を手にして前に進み出る。
「アルファベット順に名前を呼ぶので、呼ばれた者は帽子を被って椅子に座り、組分けを受けて下さい――アボット、ハンナ!」
前に出てきたのは、金色の髪のお下げの少女だった。
帽子はだいぶ大きいようで、被った少女の目が隠れるようだ。
ハンナが腰を掛けて一瞬の沈黙の後、組分け帽子が『ハッフルパフ!』と叫んだ。
どうやら、右側のテーブルがハッフルパフの生徒が集まるテーブルだったらしい。
大きな拍手と歓声に迎えられ、少女は席に着いた。
先ほど会った、太った修道士が、ハンナへ嬉しそうに手を振っている。