第21章 姫巫女と一年の終わり
――ハリー・ポッターが死んでしまう。
医務室で眠り続けるハリーに、ホグワーツではそんな噂が流れた。
もちろん、それはただの噂だ。ハリーが死ぬわけはない。
不安がるロンやハーマイオニー、シェリルたちに、シオンはそう説明した。
ロンとハーマイオニーには、地下で起きたことをこっそりと話してある。
その間にも、ハリーを心配する友人たちからお見舞いの品が医務室のテーブルや床に所狭しと並び、今すぐにでもお菓子屋さんを開けそうなほどだった。
ハリーが目を覚ましたのは、医務室に運ばれてから三日後のことだった。
彼が呼んでいると、マダム・ポンフリーから言われ、シオンはロンとハーマイオニーの二人と共に、医務室へと入った。
「五分だけですよ。それ以上は認められません」
「ありがとうございます」
ベッドの上で頭を下げるハリーの姿に、シオンたちはようやく安心する。
「ハリー、もう大丈夫なの?」
「うん。ありがとう、シオン。シオンがいなかったら、きっと僕は死んでたよ。ゲツエイが……」
「ハリーが無事で良かった!」
ハリーが何を言おうとしたのか察して、シオンは意図的に言葉を遮った。
ロンやハーマイオニーにバレないよう、こっそりと人差し指を口元に当て、口止めする。
そんなシオンの意思が通じたらしく、ハリーが慌てて「ゲツエイも頑張ってくれたんだ!」と言い直した。