第20章 姫巫女と大いなる闇
炎を潜って辿り着いた最後の部屋……奥に鎮座する大きな鏡に向かう人物に、シオンとハリーは揃って驚愕した。
「あなたが……クィレル先生! あなたが《賢者の石》を狙う犯人だったんですか⁉︎ 僕はスネイプだとばかり……」
「うそ……だって……」
シオンも言葉を紡げない。
スネイプではないと思ってはいた。けれど、シオンの中に明確な犯人像はなかったが、クィレルがこの場にいるという状況は、想像もしていなかったのだ。
いつも顔色が悪くて、どもっていて、気弱で……『石』を盗むという大胆な行動と結びつかない。
そんな二人の心中を嘲笑うように、クィレルは口元を歪めた。
声にはいっさい怯えたようないつもの震えはない。
「セブルス・スネイプか……あいつはまさにそんなタイプに見えるな。スネイプの傍にいれば、誰だって、か、可哀想な、ど、どもり、くクィレル先生を疑いやしないだろう……?」
わざと震える声で気弱な演技をして見せるクィレルに、ハリーが「でも!」と言い募った。
「スネイプは僕を殺そうとした!」
「いやいや! 殺そうとしたのは私だ。リュウグウ、お前がぶつかって来なければ、ポッターから目を離すこともなかった。もう少しで箒から落としてやれたんだ。……まぁ、スネイプが反対呪文でポッターを助けようとしなければ、もっと早く振り落としてやれたがな」
そうか。スネイプが瞬きもせずにハリーから目を逸らさなかったのは、反対呪文を掛けていたからだったのだ。