第13章 姫巫女とクィディッチ
四つん這いになったハリーがフラフラと立ち上がり、腹に手を当てて咳き込んだ。
吐き出されたのは、クルミほどの大きさの、黄金のボール――……。
それを手にした彼に、会場が一瞬だけ鎮まり返った。
『ハリー・ポッターがスニッチを取った――ッ!』
頭上高く、見せつけるようにしてハリーがスニッチを掲げる。
それを合図に、グリフィンドール側の観客席から、割れるような拍手が湧いた。
『一七〇対六〇でグリフィンドールの勝利! 一七〇対六〇で、グリフィンドールが勝ちました! 奇跡の逆転勝利です!』
興奮気味に実況役のリー・ジョーダンが試合結果を繰り返す中、ハリーのキャッチの仕方に問題があると、スリザリンのキャプテン――マーカス・フリントが審判であるマダム・フーチに抗議をする。
しかし、当然ではあるが、その講義が聞き入れられることはなかった。
* * *
試合が終わって、グリフィンドールの観客席から出ると、遠くから自分を呼ぶ声が聞こえた。
「シオン!」
見上げれば、ジョージが赤いローブを翻しながらこちらへ飛んできた。
ゆっくりと地上へ降りたジョージが、シオンの元へ駆け寄る。
「観てくれてた⁉︎」
「は、はい! えっと……その……み、観てました。あ、あの……」
両肩を掴まれてグイグイと迫るジョージに、つい反射的に身を引いてしまう。
けれど、彼は離すどころかますます近づいてきた。
「カッコよかった?」
「え……そ、それは……」
カッコよかったのはカッコよかったが、それを口にできるだけの勇気はシオンにない。
だが、その答えを待っているジョージを見ていると、何も答えないわけにもいかず。
どうにか、頷くことで意思を表現する。
ジョージもそれに満足してくれたようで、「よっしゃ!」と笑顔を見せてくれた。
「じゃあ、さ……」
そう言うと、彼は高い背を屈めて、シオンに顔を近づける。