第17章 わたあめより甘い
「ふふっ…」
何度目かわからない自分のため息を聞くたび楓は幸せそうに笑っていた
さっきまで賑やかだったお祭りの通りも、それぞれの屋台が店じまいをしていた
下駄の音、鈴虫の声を聞きながらゆっくり2人で手を繋いで歩いていた。
「ほんと…ごめんな……こんな大の大人が…」
「ふふっ。カカシ先生、大好き。」
立派な大人が外でキスも我慢できないのはどうなのだろうか
「帰りたくないなぁ…あまりにも幸せだったから。今日が終わっちゃうのが寂しい。」
楓はそう呟くと手を繋いだまま体をこちらに寄せてきた
「これからも色んなところに一緒に行けるよ」
「うん。そうだよね。…でもやっぱり、お家に帰るのは辛いや。」
素直に弱音を吐く楓は初めてだった
オレも楓に体を寄せる
「今日朝鍵閉めてきてくれたでしょ?」
「えっ、あ、うん。」
「あれ、楓のやつだから。」
「ええっ?それってどういう…」
「もともとあの部屋を借りた時、二つ貰っていたんだ。だから、それは楓が使っていいよ。
寂しくなったらいつだってオレに会いに来ればいいでしょ?」
暫く楓は黙っていた
ここからは顔が見えないものの、楓は泣いているようだった
「…先生、ありがとう。全部、あったかすぎて私どうすればいいかわかんなくなっちゃって…」
「…そのまま受け止めていいんだよ」
「わがまま言っても嫌いにならない…?」
「そんなので嫌いになってたらずーっと片思いなんかしてなかったよ。」
そんなやりとりをすると楓はぴたりと足を止めて、オレの胸元に向かって抱きついてきた
「…あらあら、本当にどうしたの。」
「……じゃあ、今日は…先生が私の家きて欲しい…」
(…そうか。楓にとってオレの家が居心地の良い場所だったとしても、今の楓が最終的に帰る場所は楓の家だからな…)
「ん。そうしよう」
「えっ?いいの?私の家何もないのに…」
「いいね。そしたら沢山2人のものも揃えていこう。次のお休みは生活雑貨を揃えたりしようか。そうやって沢山思い出を残していけばきっと寂しくなくなるよ。」
そう言って笑いかけると嬉しそうに楓は笑う
オレ達は同じ方向へ共に足を進めた