第16章 憎しみの渦
「………楓も強くなったんだな」
「えへへ、カカシ先生達のおかげだよ。そういえば私の横で倒れていた女性はどうなったの?」
「あぁ、あの人は重要参考人として尋問班のところへ行ったよ。命に別状はない。それにしてもあの人から聞いたけど彼女を庇って楓は刺されたんだな。お人好しもここまでくると問題だな。」
「………ごめんなさい…」
「はぁ、ほんとに良かった…」
少しお話をするとまた私が無事だったことを実感するようにカカシ先生は何度目かわからない安堵の声を上げ、優しく私を抱きしめた。
「…告白したのに、オレ、すっかり大事な事言い忘れてたの」
「…え?」
「オレと、付き合ってください」
突然言われるその言葉に胸がドクンと反応する
「えっ、えっ…」
「年の差とか、気にしてられないくらい楓が好きだし、もう誰にも取られたくないんだ。…返事聞かせてくれる?」
「…う、うん。勿論、私こそ、宜しくお願いします」
「…良かった。もう本当に離れないで、無茶もしないで、オレに相談して」
「…うん。相談する」
「はぁ、オレってこんなに弱かったんだな、好きが止まらなくてどうにかなりそう」
「ふふ、任務で離れる時が大変そうだね」
「あーー…。想像するだけで嫌気がさすよ…。」
経験のしたことのない愛に溢れる言葉の数々に恥ずかしさを覚えつつも、温かい気持ちが溢れた
「でも、私先生の彼女だってバレないようにした方がいいよね…?」
「ん?どうして?」
いつの間にか恋人つなぎをしていた私の手をカカシ先生は持ち上げながら体を寄せた
「あ、いや、その……。任務の時に周りに気を遣わせちゃうかなとか…」
「んーーー。そりゃそうか…。それに生徒と先生って関係には違いがないからなぁ。
こんなに近くにいるのに、まだ手が届かないようでもどかしいよ」
先生は今までずっと自分の立場を気にして気持ちを伏せていたんだろう。
気持ちを私に公言しても周りから見た私たちはいまだに恋人ではなく師と弟子であることには変わりはないのだ
(いつか、隣で手を繋ぎたいな)
しっかりと繋がれた手を見ながらそんな事を感じていた
「…2人っきりの時は恋人でいい…?」
少し寂しくなりそんなことを口にすると先生は優しい顔で「もちろん」と顔を覗き込むのだった。