第2章 マリー様 七種茨
「お前、馬鹿だろ」
ジュンは眉間に手を添え、考え事をするように唸り……
「いや、お前馬鹿だろ」
再びそう言った。
「ちょっと、待て、あのな、えっと、って、夢ノ咲の人じゃないよな?俺の知らない人だよな?」
「ご存知、夢ノ咲の人ですよ」
「ッ!!!!」
開いた口が塞がらないのか、ジュンは埴輪のように口を開けた。
「告白って、言ったよな、今」
「言いました」
「さんに、告白した」
「しましたよ」
いい加減鬱陶しくなって俺の対応もずさんになる。ジュンは開いた口がようやく閉じたのかと思えば醜い悲鳴のような叫び声をあげて顔を真っ赤にした。
「………ッ、………………こ、…………告発…「告白ですよ」」
再び叫び声をあげて言葉にならない感情を圧し殺し、口を閉ざす。
そして何かプルプルと震えた後にブハッと吹き出した。………なぜ今、息を止めたんだ。
「ゆ、夢じゃねえ…!苦しい……ッ!!」
「ほっぺつねってくれません?分かりにくいんですよ。」
「つかお前それいつの話しだよ!SS昨日だぞ!?年明けの忙しい時に話があるっていうからわざわざ、わっざわざ出てきてやったのにっ!!!」
ジュンが捲し立てる。こんなに叫んでも誰も何も言いに来ないのは、ここがカラオケボックスだから。
マイクとタッチパネル型の機械を両手に抱えてさっきからこんな感じのジュンは、昨日の疲れも特に残ってないらしく元気だ。
「そのわりにはノリノリじゃないですか!Eveの殿下のパートなら俺にも歌えますよ!!」
「歌えねえよ!今このテンションでEveの曲歌えねえよ!!それよりさっきの話もっと詳しく聞かせろ!!」
そう言うなら、とりあえず両手につかんで離さないそれを机に置いたらどうだろうかと思ったが若干パニックになっているらしい。
パニックなのは俺も同じだ。
自分が信じられないのだから。
正直、俺も戸惑っている。