第3章 彩斗様 鳴上嵐
私の幼なじみはかわいい。
「ので、私はかわいくなくていいんじゃないかなと思うんだ。」
「現実、可愛いくないしねえ。」
「よっしゃ。」
登校中にばったり会った瀬名先輩に胸のうちを話すとけっこう聞いてくれる。普段はトゲがあるけど、根は優しい人だから。朝は後輩をいびる気がおきないのかわりと優しい。
朝によく会うので毎日同じことを話す。今日も私はぐちぐちと話している。
「なるくんが可愛いからって、卑屈になってるだけでしょ。」
「あれは女子の最高峰だと思うんです………。」
「いや、男だから。」
「わかってますよ?」
「は?何なの?」
先輩がめんどうくさそうに言う。
………めんどうくさいのは分かっている。でも、これは私のなかでは難しいことこの上ない。めんどうくさいの上をいっている。
「誰よりも近い距離にいる女子の最高峰の男の子のせいで女の子としてのプライドがズタズタになった、と。」
「そしてシニカル王子のせいで今泣きそうです」
私たちがふざけた会話をしていると、後ろから衝撃を感じた。瀬名先輩が悲鳴をあげる。
「は~い、おはよッ!二人とも!」
何と、話の内容の主役であった。
「何の話してるの?」
………可愛い。
ちょっとした話し方、仕草が可愛い。
「…………別に。」
「…………別に。」
「んもう!何よ二人とも!そうやって仲間はずれにするんだから!」
嵐がプンプン怒るように頬をふくらませる。
私たちは顔を見合わせて足早にその場を去る。後ろから嵐が追いかけてきたが、全力で無視した。