第2章 マリー様 七種茨
「ごめん、茨くん」
私は再び謝った。流れる涙を何とか止めて、彼に向き合った。
プロデューサーではなく。
私として、七種茨に向き合う。
「私……あの場所から出てきたの、最近で…まだまだわからないこと…たくさん、あって……」
手から力が抜けていく。体温が一気に下がるのがわかる。
「……………………………わかってる、…の………」
喉が嫌に渇いて声がうまく出せない。つっかえて変なところで途切れてしまう。
「茨くん、嘘ついてない、から。本当に、私のこと好きでいて、くれてるの、わかってるの。」
あぁ、私はいつからこんなに弱くなったんだろう。折角止めたのに、また涙が流れ落ちてきた。どうしたら良いんだっけ。笑い方なら、夢ノ咲の皆が教えてくれたのに。
涙でぐしゃぐしゃでみっともない顔だけど、私は何とか顔をあげた。
「茨くんの手をとればきっと私、幸せになれるんだと思う。でも、私………ッ…!!」
茨くんの顔が涙でにじんで見えなかった。
君は、いつも私に手を差しのべてくれた。だけど、本当は……
私が手を差しのべたかった。
苦しんでいる君を助けてあげたかった。私に親を憎む気持ちは理解できない。だって、私は憎むべき親のことなんて何一つ覚えてないから。
「誰かに幸せにしてもらうより、私が誰かを幸せにしたい!!茨くんに好きでいてもらうより、私が君を好きでいたいの!!」
今でも思い出せるあの日々。君が私にくれたもの。私が君にあげられなかったもの。
「だから………………………ッ…、…わ!」
言葉を続けようとしたとき、私は思わず悲鳴を上げた。
だって、こんなの……。
茨くんが私に抱きつくなんて、初めてだ。