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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第6章 【家康・中編】※R15


夜半も近くなったころ、誰かが竜昌のいる客間を訪れた。
月の光に映し出された男の影が、障子に映る。
「竜昌様」
「帯刀か?どうした、入れ」
一瞬、家康かと、ありえない期待してしまった自分がおかしくて、竜昌はつい笑ってしまった。
「何か楽しいことでもございましたか?」
「いや、なんでもない。それよりどうした?こんな夜遅くに」
「厠にいく途中、行灯の光が見えましたので…」
「そうか。何かこう、寝つけなくって…」
「では眠れるまで二人で昔語りなどいかがでしょう?」
「そうだな!お前とゆっくり話すのも久しぶりだし」
二人は膝をつきあわせ、近況の話から、子供のころの思い出話、秋津の戦でのことなど、尽きることなく語り合った。
「ときに竜昌様はいつまで秋津におられるおつもりですか?」
「そうだな、家康様がもう二・三日視察をされて、そのあと駿府に向かわれるから、案内役の私の御役目はそこまでかなあ」
「左様でございますか…して次はいつごろ?」
「…私は信長様の家臣だから、家康様が城主となられた今となっては、もう秋津に来ることもあるまい」
竜昌は寂しそうに目線を伏せた。
「そうだ帯刀、私はもう城主ではないし、織田家の一家臣だ。お前との身分の差もない。これからは竜昌でいいよ」
「え…」
「なんだか子供のころみたいだなあ?」
くすくすと笑う竜昌の顔を、帯刀はじっと見つめ、低い声でその名を呼んだ。
「…竜昌」
「うん?…なんかちょっと照れ臭いな…」
はにかんで薄く赤らむ竜昌の頬に、帯刀の手が触れた。
「もう子供じゃないだろ・・・?」
「え…」
「竜昌…綺麗になった…」
「たて・・・わき?」
帯刀の指がつっと竜昌の頬を撫で、顎をなぞり、その先端をつまむと、くいと持ち上げた。
「待っ…」
竜昌は、半ば強引に近づいてきた帯刀の胸を押し返そうとしたが、逆にその手を捕られてしまった。
「竜昌」
竜昌は両手首を掴まれ、ドサリと床に押し倒された。剣の腕では勝てても、男と腕力勝負で勝てるわけではない。振りほどこうとしても、体重をかけて抑え込まれ、足の間に割って入られ、竜昌には成す術がなかった。
「帯刀、放せ」
「竜昌」
見上げると、そこには余裕を失った表情の帯刀がいた。先ほどまで談笑していた幼馴染はそこにはおらず、ただただ劣情を剥き出しにした『男』の姿があった。

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