第20章 【光秀編】(おまけ)城代家老・水崎一之進の憂鬱 その2
「おい、菊…?」
「…かしゃま?またねんね?」
『…ダメだこりゃ…』
梓がコテンと寝転んで、菊の顔を覗き込んでいる。
一之進は、竜昌からの書状を握りしめながら天井を仰ぎ、すでに何度目かわからない溜息をついた。
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数日後、安土城では。
竜昌は、もう一度 義兄の一之進から受け取った書状を読み返すと、それを丁寧にたたんで胸元にしまった。
そして部屋の前でひざまずき、戸の向こうにいる信長に思い切って声をかけた。
「殿、竜昌です。お願いしたき議があって参りました」
「竜昌か。入れ」
「失礼いたします」
スッと背筋を伸ばして戸をあける竜昌の顔は、まるで吹っ切れたように晴れやかだった。
(おまけ・終)