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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第19章 【光秀編】#2 月夜の兔は何見て跳ねる


いつのまにか、私は項垂れ、足元を見ながらとぼとぼと夜道を歩いていた。
呼吸が落ち着いてくると、少し冷静になれた。
兎にも角にも、私も舞様のように、光秀様になにか御礼をしなければ。でもこういうとき、何を差し上げればいいんだろう?童のときから武芸の稽古にばかり明け暮れ、裁縫のひとつも習わなかった自分を、今更ながら恥じた。

足元の地面には、月に照らし出された自分の影がくっきりと映っている。ふと光秀様の御屋敷のほうを振り返ると、その上空には大きな満月が浮かんでいた。月でうさぎが餅をついている影まではっきりと見える。

そういえば童のころ、乳母やが寝物語に聞かせてくれた。昔々、うさぎが神様に供物を捧げようとしたけれど何も見つからず、ついに自らの身体を火に投じて捧げた。それを憐れんだ神様が、うさぎを月に祀ったという。

『私は…光秀様のために一体なにができるだろう?』

光秀様が拭った頬が、じんじんと熱い。
私はそっとその痕を指でなぞった後、その熱を振り切るように、また城への道を駆け出した。



(光秀編#3につづく)
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