• テキストサイズ

【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第17章 【信玄編・後編】※R18※


竜姫、と紹介されたのはまぎれもなく、美しい姫の恰好をした竜昌だった。

「この度は同盟を結んでいただき、まことにありがとうございます。我が父に代わりまして御礼申し上げます」

竜昌は口上を述べると、目の前の桐箱にかけてあった紐をほどき、蓋をあけた。
中にあったのは、見事な誂えの刀────来国長だった。

「っアー!!!」

それを見てやっと思い出したのか、幸村が素っ頓狂な声をあげ、広間の注目を集めた。

竜昌はその刀を両手で捧げ持ち、謙信に向かって一礼すると、信玄に向き直り、にっこりと笑った。

まるで匂いたつ梅の花が開くようなその笑みに吸い寄せられるように、信玄がよろよろと竜昌に歩み寄った。

「りん…」

信玄はまだ信じられないというように瞳を揺らしながら、竜昌の前にひざまずき、片手を伸ばしてその頬に触れた。手のひらから、確かなぬくもりが伝わってくる。

「信玄様…」

信玄は突然、両腕を広げて、衆人環視の中で竜昌の身体を抱きしめた。

「!?」

両手に剣を持っていた竜昌は、成す術もなくその胸に抱きすくめられる。

「りん、りん、」

信玄は竜昌の首筋に顔をうずめ、何度もその名を呼んだ。
竜昌はやっとのことで片手だけを外すと、その手を信玄の背中にまわし、あやすようにぽんぽんと叩いた。

「うっわー。俺、御館様が泣いてるの初めて見たわ…」

若干引き気味の幸村の耳元で、いつもの声がした。

「俺も同感だ、幸」

「うわっ!なんだよ佐助、急に後ろからくんなよ」

「忍びだからね」

「いやーん御館様ったら、だ・い・た・ん♡」

さらにその後ろから追い打ちをかけたのは、信玄の三ツ者、雫だった。

「あ、ヤバイ。謙信様のイライラがmaxになってる」

「まっくす?」

上座では、完全に蚊帳の外の謙信が、その形のいい眉をひそめて、信玄を睨みつけている。
/ 372ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp