第12章 【秀吉・後編】※R18
翌日から、竜昌は 三成と手分けをして秀吉の仕事の穴埋めをするようになった。
『秀吉様、こんなにお仕事こなされてたのか…』
以前から自分にできることは手伝っていたつもりだったが、竜昌が見ていたのはほんの一部だったということが身にしみてわかってきた。寝る間を惜しんで働いても、まったく片付く気配がなかった。
そして秀吉の見舞いにすらいけないまま一月が過ぎた。
秀吉の状態は、毎日のように屋敷に看病をしにいっている舞の口から知らされた。
「秀吉、やっと熱が下がったよ」
「身体を起こせるようになったよ」
「家康が、驚異の回復力だってびっくりしてるよ」
自ら見舞いにいきたいのは山々だったが、それよりも、秀吉が復帰してきたときの仕事を少しでも減らしておこうと、竜昌は思いとどまった。
『今は…私ができることを精一杯やろう。わたしが囮になりにいくときに、舞様は私を信じてくれた。今は私が舞様を信じよう』
「竜昌殿、それは私が…」
「ありがとうございます三成様、では私は秀吉様の領地の視察に行って参りますね」
「よろしくお願いいたします」
竜昌は山のような書簡を三成に託すと、休む間も無くたすき掛けをしながら厩に向かって歩き始めた。途中、思い出したように振り返る。
「あ、三成様、お部屋におにぎり置いておきました。召し上がって下さいね」
「いつもすいません」
にっこりと三成が笑う。三成とて怒涛の仕事に疲れているはずなのに、そんなそぶりも見せない。しかし最近、さすがに食事を忘れてしまう回数が増えた。
「三成様まで倒れられたら、私が叱られてしまいます」
「はい、肝に命じます」
三成はそう言って笑い、厩に駆けていく竜昌を見送った。
厩にいく途中、政宗とすれ違った。
「よう竜昌、久しぶりにどうだ」
そう言って政宗は剣を握る真似をした。剣術の稽古をしようと言うのだろう。
「あ…ごめんなさい政宗様。これから視察にいかないと…」
「そっか…忙しいんだな。無理すんなよ」
「ハイ!」
タタタッと駆けていく竜昌に、以前のような覇気はない。
「休めと言っても無駄だろうな…あいつは秀吉が斬られたのは自分のせいだと思っている…」