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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第11章 【秀吉・前編】


秀吉は明らかに、舞に対して『主君の女』以上の感情を抱いていた。
無理もない、と竜昌は思った。
実際、舞の明るい言動、無邪気な仕草、そのくせ物怖じしない物言い、そしてなによりもその花のように可憐な容姿は、人をひきつけて止まないものだった。
秀吉もまた、周囲にに明るさと笑いを振りまき、それでいて思いやりの深い、太陽のような存在だった。二人はお似合いなのだ。
その秀吉が時折みせる、切なく思いつめたような表情も、舞を想う故だと思えば合点がいった。
竜昌が唇を噛んで空を見上げると、月の明るい夜空を貫き、強く青く輝く天狼星(シリウス)が、氷の粒のように夜空に浮かんでいた。
ジリリ、と胸が焼き焦がれるような痛みを、夜の冷たい空気で冷やそうと、竜昌は胸いっぱいに息を吸い込んだ。


─── ◇ ─── ◇ ───


「夜分失礼します、秀吉様。例の報告書ができあがりました」
「おお、三成か。入れ」
三成が襖を開けると、秀吉は行燈の側に座り、煙管を咥えながら、手にした書簡を読んでいるところだった。
「やはり秀吉様のおっしゃるとおり、年貢の石高に不公平が生じていました。再び検地して計算し直しましたので、百姓たちは安堵すると思います」
「そうか、ありがとう」
秀吉は、三成から受け取った報告書の束を、片手でぱらぱらとめくった。そこには見覚えのない、美しい筆跡。
「ん?これ誰が書いた?」
「あ、その冊子は竜昌殿にお手伝いいただきました」
「竜昌が?あいつ意外に達筆なんだなあ」
「ご存じなかったのですか?それに竜昌殿は算術にも長けていらっしゃいますよ」
「ほう」
「そこにある平越村や大宿村には、竜昌殿みずから検地にいかれて、石高の計算もして下さいました」
『そうか…全然知らなかった…』
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