【YOI夢】ファインダー越しの君【男主&オタベック】
第4章 エピローグ
大会終了後のバンケットで、己の誤解による発言から傷つける真似をしてしまった日本の『青い瞳のサムライ』と和解をしたオタベックは、その後彼と微妙な関係にあったユーリが互いの想いを確かめ合うのを、物陰から純とこっそり窺っていた。
これまでギクシャクしていた彼とユーリを案じていた純は、仲直りした2人に安堵する一方で、特に未成年者の『サムライ』への懸念を続けていた。
「落ち着け、ユーリ達に気付かれたら厄介だ。それに、人を愛する気持ちは誰にも止められない」
「それはそうやけど…」
不承不承といった表情の純と話を続けながら、オタベックはふと脳裏に浮かんだ皮肉屋の男の姿に、無意識に視線を反らす。
FS終了後「3位おめでとう。お疲れ様」とだけメッセージを受け取っていたが、以降一切の連絡を寄越さないのは、少々素っ気なさすぎやしないだろうか。
そう考えていると、オタベックのポケットの中でスマホが震えた。
純から少し離れて確認すると、まるで見透かされていたのかという程のタイミングで、守道からメッセージが届いていた。
『実家が最近、TVとレコーダーを買い替えていた事に感謝だ。本当は会場で撮れれば良かったんだけど、無理だしね』
意味が判らず首を傾げると更にスマホが数回震え、メッセンジャーの画面に、思わぬものが飛び込んできた。
「…!」
それは、氷上で戦う姿と、演技終了直後痛みを堪えながらも、力を出し切り天を仰いでいるオタベックの画像だった。
『久々に、カメラレンズその他総動員させたよ。馬鹿みたいだろ?』
「…バカ。本当に、バカな人…」
吐息混じりに呟くオタベックの視線は、画像に釘付けになってしまっていた。
これを撮る為に、彼はどれ程試合の録画を見返したのだろうか。
どれ程自分の事をファインダー越しに見つめ続けていたのだろうか。
不器用で皮肉屋で、だけど何処か憎めない彼の自分への想いが、画像にこれでもかと込められていたのだ。
そしてまた、自分も同じように彼の事を。
「オタベックくん、どないしたん?」
純の呼びかけに我に返ったオタベックは、一旦スマホの画面を閉じて何でも無い風を装ったが、
「…教えて欲しい事がある」
やがて意を決した表情になると、こちらを見て目を丸くさせている『彼』の先輩である純に、話を切り出した。