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【YOI夢】ファインダー越しの君【男主&オタベック】

第3章 公私の国交


「今夜は、楽しい話が出来ました。また貴方とお会いするのを、心待ちにしています」
「…こちらこそ。どうぞ、お大事になさって下さい」
大使公邸前で、守道と別れたオタベックは、カザフ大使と共に迎えの車に乗り込む。
それを見送る守道の背後では、篠大使が穏やかな笑顔を浮かべていた。
「今宵は、感謝する」
「礼を言うのはこちらの方かも知れません、父さん」
口元を綻ばせた末の息子を、篠大使は興味深そうに見つめる。
「帰国後の進路はどうするつもりだ?もしも、お前がその気なら…」
「俺が外交官の器じゃないのは、貴方も良くご存知でしょう。それよりも…新たにやりたい事が見つかりました」
不意にポケットの中のスマホが鳴り、オタベックの公式のものとは異なるプライベートアカウントから届いたメッセージを一瞥した守道は、少しだけ表情を引き締めた。

後部座席のシートに身体を預け、心なしか嬉しそうな表情でスマホの画面を確認するオタベックを見て、カザフスタン大使が声をかけてきた。
「気晴らしが出来たみたいで、何よりです」
「今夜は、本当に有難うございました」
「随分、守道くんと話が弾んでいたようですね」
「彼は、俺と同じ写真が趣味なのです。共通の話題で盛り上がりました」
大使に返事をしながら、オタベックは暫し窓の外に視線をやる。
「彼は、もうすぐロシアでの留学を終えて、日本に帰国するそうですが…この先も自身の志す学問を究めたいと、俺に話していました」
「そうなのですか。確かに上のご兄弟達が、既に篠大使の後を継いでいらっしゃいますからね」
「…旧ソ連時代から、ロシア及び中央アジア各国の事情に精通する篠大使と、その子息の守道さん。…彼ら親子は、今後我らカザフスタンにとっても、友好かつ有益をもたらす存在となるのではないでしょうか」
「ほぉ…」
今、自分は浮わついた声を出してはいないだろうか。
オタベックは努めて平静を装うと、密かに高鳴りだした胸の鼓動を押さえつつ、もっともらしい口上を述べる。
珍しく雄弁な『祖国の若き英雄』の仄かに赤みを帯びた横顔を、カザフ大使は面白そうに眺めていた。
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