第1章 1
目が覚めたら雨が吹雪いてた。
3秒くらい窓の外をぼーぜんと見てて、ああ「嵐」だ、って、言い回しを思い出したあたりでようやく目が覚めた。
「……ちょ、ちょちょちょっとシンジー!やばいやばい、絶対電車遅れてる!おきろー!!」
慌ててとなりで寝トボけてる旦那をたたき起こす。
ふだんはご飯できるまで寝かせておいてあげるんだけど、ほら、あたしってば良妻だから?
だけど今日はやっばいわー。寝てたら遅刻する流れだ。
寝ぼけてちゅーしようとしてくる頭をすぱーんとひっぱたいてふとんを脱出。大急ぎでご飯の準備にかかる。
いつも凝ったものなんか作ってないけど、今日は本気の時短モードだ。ごはんみそ汁あまりの煮物に漬物で許せ。だいじょーぶ、シンジーは漬物があればどうにかなる。
わかめと豆腐ぶっ込んでみそ汁作って、煮物レンチンしてる間にぬか漬けと柴漬けを出す。正味5分でなんとか食べられる状態になった。
その頃には深司も目が覚めたみたいで、慌ててこっちの部屋に出てきた。
「深司、とりあえず食べて!タオルとか服出しとくから!」
「助かる」
焦ってるのに声の感じが変わんないのは特技だわ。あたしぎゃんぎゃんなっちゃうからなぁ。
ばたばたと服とビニール袋とタオルを出して、洗面所のタオルを替えて、やばっ、今日ゴミの日!?
「行きたくねええ!」
「来週でいいじゃん」
「ゴミと共存でもオッケー!?ありがと深司!ラブ!」
「はいはい愛してる愛してる。服ありがと」
「それほどでも!」
「そこはどういたしましてでしょ」
さくっと食べ終わった深司のお皿を洗おうとしたら片付いてた。早いな!今日くらい置いといてくれらばいいのに!
気を取り直して、電車の遅延チェック。5分ちょい遅れてるってことは、15分くらい余裕みとけばだいじょーぶかな。なんとかなりそうだ。よかった。
支度ができた深司に行ってらっしゃいしたら、でこちゅーされた。
唐突な愛情表現!