第1章 1
「ねーねーねーシンジー!ちょっとマジめっちゃ面白いのアレ、紅ちゃんセンパイが言ってたんだけどさー」
「……それさぁ 」
今日もシンジーの顔が見えたから、飛びついてっておしゃべりタイム開始。シンジーがなんか言ってるんだけど、とにかくあたしのしゃべりたいことしゃべっちゃうんだ。あ、シンジーってあたしの彼氏なんだけどね。声ちっちゃいから聞こえにくいんだよね。
「ほら昨日紅ちゃんセンパイの彼氏っぽい子だけ生き残ってるっていったじゃん!今日ついに逃げ遅れてデコられて!次はウチに来るらしいよ?やばいねソッコーデコられるよね!」
「はぁ…… 」
んで今あたし的にホットなのは青学の先輩の話。やってること超ブッとんでて面白くて面白いからつい話しちゃう。あ、ちなみにデコられるってのは「デコッパチテロされる」の略。
「あーでもあたしもシンジーも割と常にデコってるからあんま関係ないかなぁ?でもでもデコッパチって書かれると絶対笑えるよねー!」
「ゆつきさぁ 」
「やっばいって絶対シンジー狙われるって!今日か明日くらい来るって!いや今日来るね今日、撮影準備しとかなきゅぐむぐっ」
「……うるさいよ」
テンションマックスでしゃべってたあたしにシンジーの手が飛んできた。やっべしゃべれないじゃん何だよ。しかもなんか顔近くない?
「……ゆつき、ほんと他のやつの話ばっかだよなぁ……せめてキスくらいしないと割に合わないし」
耳元でシンジーの声がする。久々にちゃんと聞こえたよなーなんて思ってるうちに口塞いでた手がとれて、そのすきまから唇がちゅーしに忍び込んできた。こんな5秒以上声出せないなんてしんどいはずなのにシンジーだからなんかしあわせ、ああこのままずっといるんでもいいかもしれない。