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警戒心が仕事しない!

第1章 1


「あちー」
夏の外部活の殺人的暑さに、相手もなく声が漏れた。
部活用に氷8割突っ込んできた水筒をあおるだけじゃとても足らなくて、足が自然に水道に向く。
水道周りは混んでいた。バスケ部もちょうど休憩らしい。むさ苦しさと汗臭さでここだけ空気が重くなってるような気がする。勘弁してほしい。水道ここしかねえから行くけど。

バスケ部連中との仁義なき水道争奪戦に不戦勝(決まり手:休憩終了)して、頭っから水浴びしてると、後ろの方から「あっちー!」とか声が聞こえてきた。
ばたばたと足音が隣まで跳ねてきて、水音がひとつ増える。
何だよ、と大したことのない疑問に顔を向けると、半崎の顔と女バスのユニフォームの脇
「うおおおお!?いてぇ!?」
思わず叫んで顔を上げ、ようとしてしたたかに蛇口に後頭部をぶつけた。痛い。
いや問題はそこじゃない。何と申しますか、脇、そう脇から…バスケのユニフォームって緩いだろ?女子があれ着て前屈みになってバンザイしたらどうなるか想像しろ、想像しろよ。…いややっぱ想像すんな、でも何が見えたかわかるだろ?
…こいつ、一応女だったんだな。
「あー?何やってんの、バネ」
「うっせ」
見えてんだよ!
当人はのんきな声でこっちに顔を向けて、水が目に入って「いってぇ」とか言ってやがる。
気づく様子もありゃしねえ。

「男テニも休憩?」
「もう終わりだけどな」
「ふーん。氷ちょーだい」
「やらねーよ。何でだよ」
「あっちーから。恵んでよ」
「やらねーよ!間接キスじゃねーか!」
いつもしてるようなバカ話なのに、変に意識させられたせいで妙な反応になった。
しかも元凶の半崎ときたら、
「女子か。やだ、バネっち乙女」
さっぱりオトコゴコロというものを解しない。
「ぅっせー!」
急募:警戒心。
…ただ、いいもん見たって思ってるのは、男の本能とか思春期ってことで、許してくれ、な?
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