第7章 Black★Master【微黒アスラン×メイドR18】
私にとって一番幸せな時間。
それは、ラクス様付き使用人の私だけが許される、ラクス様の御髪を整えながら、お喋りをする時間です。
「……」
「ラクス様、どうなさいましたか?」
この時間は、どのようなものにも勝る大切な時間なのですが、今夜のラクス様はいつもと様子が違いました。
「明日、パーティーがあるのは知っていますよね?」
「はい、もちろんです」
私は、ラクス様の身支度を手伝うだけですが、それでもパーティーと聞くとワクワクしてしまいます。
「そのことなのですが、是非にもパーティーで給仕をしてほしいのですわ」
「ぇえ!?私がですか?」
全く予想できなかったラクス様の言葉。
だって明日は評議会の方々がたくさんお見えになる大事なパーティーだというのに。
まだ勤めて半年しか経ってない私が大事なパーティーに携わるのは気が引けてしまいます。
「それに、に会わせたい方がいますの」
「会わせたい方、ですか?」
はて、誰のことでしょう。
ラクス様の御友人の方はほぼ全員存じ上げておりますが。
「えぇ、が気に入るほど、素敵な方ですわ」
私が気に入る。
何故そこで私が関係するのか、見当もつきません。
「ぇ、ぁ……はい。それでは明日、ラクス様のお申し付け通りに致します」
「ありがとうございます、」
そう言って、満遍の笑みのラクス様。
この笑顔も、素敵です。
「ラクス様の御期待に添えられますよう、頑張ります」
ラクス様の笑顔には到底敵いませんが、私の精一杯の笑顔で言葉を返すと、ラクス様の部屋を退室しようとする。
「それと……」
「はい?」
ですが、何故か呼び止められてしまいました。
「明日はいつもよりスカートを短くしてきてくださいな!!」
「え?ぁ、はい……」
ますます何故、なのでしょうか。
頭の長が疑問でいっぱいになりながらラクス様の部屋を退室する。
とにかく、ラクス様の謎な行動は気にしない。
これまでラクス様のために頑張ってきたのです。
だから、ラクス様の言い付け通りにするのは当然のこと。
何事も、精一杯やらなくてはなりません。
そう意気込み、せっせとスカートの裾を繕いながら、夜は更けていったのです。
明日、自分の身に何が起きるのか知らずに。