第12章 ほーこく
雪月誘拐事件から一週間後。
「............」
無言で仕事をこなす安土城城主の膝の上には、
「...zzz」
お昼寝ナウなポケモンの姿の雪月が。
何故、こんなことになっているのか。
それは...
「...信長様、まだ雪月のこと離さねぇのか」
「只でさえ3日も目を覚まさなかったんですから、その反動が強すぎるんじゃないんですか」
「まぁ、心配なさる気持ちもわかるし、雪月も嬉しそうだから良いのかとは思うんだがな...」
そう。
誘拐事件から3日後に雪月は目を覚まし、安土城は大騒ぎになった。
今まで以上に過保護になる秀吉や政宗、『良かったです』と涙を浮かべる三成、ほっと胸を撫で下ろす家康、そして、
――――雪月を抱き締めて離さない信長――――
実を言うと雪月、誘拐事件のことを全く覚えていなかった。『無意識に記憶に蓋をしているのでは?』と言うのが家康の意見だが、十中八九そうだろう。むしろ思い出させないほうがいいかもしれないと満場一致、この一件に関しては箝口令が出されたのだ。
まぁ雪月は大好きな兄と四六時中一緒に居られるので嬉しそうだが。
「...で、家康、光秀は?」
「そろそろ復帰させても大丈夫だと思いますよ...まぁ、布団の中でも情報収集はやってたみたいですが」
「やっぱりか」
光秀の傷、表向きは犯人に斬られたとあるが、実は暴走してポケモンの姿になった雪月に負わされたという事実は光秀と家康、そして信長しか知らない。
「明日にでも信長様に報告に行くって言ってましたよ」
「...彼奴は休むって言葉を知らないのか」
(秀吉、お前もな/秀吉さん、アンタもでしょBy政宗&家康)
心の中で秀吉にツッコミを入れる政宗と家康。
「...しっかし、信長様は何時まで雪月を独り占めする気だ?」
ここ最近、信長は雪月の側を片時も離れようとせず、朝から晩まで一緒だった。そのせいで雪月に構う時間が極端に減ったと嘆く政宗。
「...多分暫くは無理だと思いますよ」
「諦めろ、政宗」
政宗の肩に手を置く家康と秀吉。