第9章 おべんきょ
「どしたの、みっくん?」
「...何でもありませんよ、雪月様」
心配させまいと、三成は雪月の頭を撫でた。
その時、
「三成、いるか?」
「秀吉様」
入ってきたのは秀吉。
「ひでしゃん!」
「雪月もいたのか。今日も頑張ってるな、偉いぞ」
「ふひゃ~」
雪月の頭を撫でる秀吉。三成に頭を撫でられているときの雪月の顔を見てからというもの、秀吉達は何かあるたびに彼女の頭を撫でるようになった。
「それで秀吉様、何か御用でしょうか?」
「あぁ、それが...って三成、」
「?はい」
「お前、昨夜ちゃんと寝たか?」
「え?」
「目の下、隈が出来てるぞ。うっすらとだが」
文章だと判るはずもないが、三成の目の下にはうっすらと隈が出来ていたのだった。
「そう言えば、昨日新しく入った新書を読んでいて、気がつけば朝になってましたね」
何でもないというふうにさらりと言った三成に、秀吉は頭を抱えた。
「三成、今日は雪月の勉強はいいから少し寝ろ」
「え、ですが...」
「そんな顔じゃいつ倒れても可笑しくないぞ」
「私、全く眠く無いのですが...」
「だーめーだ、半刻でもいいから寝ろ」
押し問答が続く豊臣主従。
それを止めたのは、雪月だった。
「みっくん、ねなくちゃ、だめ、なの...?」
「?あぁ」
「ゆづき、できるよ」
「は?」
疑問符を浮かべる秀吉を余所に雪月は三成の目を見つめ、静かな声で呟いた。
「さいみんじゅつ」
「...!」
「っ、三成!」
突然倒れかけた三成を慌てて支える秀吉。
「...ZZZ」
「寝てる...?」
秀吉は自身の足元にいる雪月に目線をやった。
「(ぽけもんってこんな事も出来んのか)...今の、雪月がやったのか?」
「あい」
「そうか......凄いぞ、ありがとな」
「えへへ」
それからというもの。
「みーつーなーりー、また徹夜したのか!」
「申し訳ありません秀吉様、新しく手にいれた戦術書が面白くて...」
「問答無用だ、雪月、」
「あい!」
「ぁ、雪月、さ、まぁ...ZZZ、」
徹夜して秀吉に怒られた後、容赦なく雪月によって強制的に眠らされる三成の姿が見られるようになったとか。