第6章 ひでしゃん
朝。
「...ん......」
障子から差し込む朝の日差しに、雪月は目を覚ました。
(...あれ、なん、で...?)
あの忌まわしい施設から逃げ出し、佐助と名乗る青年と出会って、それで...?
「...あ!」
そうだ、こんな化け物のような自分を『妹』にし、更に『名前』までくれた『兄』のことを思い出し、思わず飛び起きた。
その時、
「雪月、入るぞ?」
スッ
「お、起きてたのか雪月、おはよ」
おもむろに襖を開けて入って来たのは秀吉。
しかし...
「......っ...ぃや...」
やはり昨夜の言動で完全に敵認定されているのか、それともまだ心を開ききって無いのか(完全に前者ですありがとうございません)雪月は怯えた表情を浮かべ、距離を取ろうと後ずさった。
「...っ」
秀吉にとっては雪月の身の上話を聞いた時点で既に警戒する気なんてもうこれっぽっちも無くなっていたのだが、いかんせん、雪月に警戒される心当たりがありすぎる。
(知らなかったとはいえ、傷つけちまったのは俺だ。自業自得だよな...)
「?!?!」
思わず、秀吉は雪月を抱きしめた。
びっくりしたのは雪月である。身を捩って秀吉の腕の中から抜け出そうともがいた。
「...ごめんな」
「ふぇ...?」
そんな雪月の行動を止めさせたのは、秀吉の謝罪の一言だった。
「お前は、雪月は何も悪くねぇのに、俺はお前のこと怖がらせて傷つけた。謝っても許されないことをしちまった...だけど、謝らせてくれ......本当にすまなかった」
「...っ」
雪月はある意味びっくりして固まった。
「な、んで...?」
わからない。何で彼が謝っているのか。
何で彼に抱き締められているのか。
...何で彼はこんなに暖かいのか。
「...お前、怖かったんだよな。突然知らないところに放り出されて、知らない人間に囲まれて」
「!」
雪月の身体が一瞬ピクッとなったが、秀吉は構わず続けた。
「今なら解る。何であの時突然俺に攻撃したのか。俺のこと、怖かったんだよな...」
「...(こくり)」
(素直に頷かれても若干傷つくな...)