第46章 【番外編】残したい
先生はいつもよりもゆっくりした足取りで、私と最後尾を歩いた。
都内の博物館見学と、短いがお土産を見る自由時間が設けてあり、次のチェックポイントまで時間内に行けば良いらしい。
巨大な鯨の像が木漏れ日を浴びながら私たちを出迎えてくれた。
中の催事場は、個性が発見されてからの人体の発達や、遺伝子による個性の特徴など、生物学メインだった。
本来目に見えないほどの小さな螺旋が、今は目の前のスクリーンに大きく再現されている。
タッチパネルに触れると、渋い音声と共に説明が開始された。
博物館に入ると、蜘蛛の子を散らすように、みんなそれぞれ自分の興味のある分野のブースへと走っていった。
最後尾の私たちだけが置いてけぼりである。
「みんな、行っちゃいましたね」
「…ああ」
先生は呆れたようにため息を吐く。
さて、と先生が歩き始めるので後を追った。
「終わったらレポート書くんだろ?」
「あ、はい!」
「お前の書きやすい題材は…」
先生はこの後の課題を気にかけてくれて、大体検討がついている、とでも言うようにすたすたと目的の場所まで歩き始めた。
先生の解説を聞きながら、時々音声ガイドと合わせたりするのはわかりやすく、かなりこの後は楽になるだろうと思った。
ノートにメモをとり、時折、配布された課題用のカメラに模型などを撮った。