第39章 【飯田編】彼女だけの
不審者が出ているという貼り紙を校内のあちこちに貼った。
寮でも伝達としてクラス員には伝える。
あまり心配もないだろう、皆プロの卵である。
唯一、彼女はソファに座り、不安そうな表情をした。
「ああ……君は気を付けた方がいい」
「ちゃん、外出するときは言ってね」
「あ、うん、ありがとう」
ヒーロー科である我々が支えとなれれば、彼女も些か安心だろう。
自分も一応、手が空いていれば対応すると声をかけ、花開くように笑うその子に嬉しさを覚える。
担任もさすがに身内とあれば不安なのか、その週はやけに寮に出入りするのを見掛けた。
彼女も頼みごとはなるべく先生にしているらしく、二人が一緒にいるのはよくある光景の一部だ。
「鍵持ったか?」
「…はい、大丈夫です!」
「御二人で買い物ですか?」
私服で並ぶ姿は、さながら親子か年の離れた兄妹か。
やはりどことなく似ているのかもしれないとなんとなく感じる。
「うん、ちょっとね」
よほど二人で出掛けるのが嬉しいのか、彼女は優しく笑う。
休みのためか、うっすらとされた化粧がなんとなく映える。
違和感はあったが、自分も身内の兄に尊敬の強い気持ちがある。
あれに似たものだろうと納得する。
見送ったのは昼に差し掛かろうとするところ。